事業戦略のためのヒント

活きた事業計画書をつくる3つの視点

事業計画書は戦略の設計図である。そこには経営者の「意志」がなくてはならない。あるいは、目標に確実に辿り着く具体的な道筋が描かれてなくてはならない。

~未来を照らす事業計画をつくるための3つの視点を考える。~

1.社会性~顧客の視点

まずは会社の軸をしっかりと定める。「わが社の存在価値」は何か?事業計画は数字の羅列であってはならない。数字は手段。その先の「生きる目的」がなければ、計画は無機質である。わが社は誰にどんな価値を提供する会社なのか?
スターバックスはコーヒーを通じて「サードプレイス(第3の場所)」を提供する。そのコンセプトはライバル他社と一線を画した価値を生み、従業員も活き活きと働き、顧客から愛され、社員からも愛される会社になろう。

2.戦略性~経営者の視点

社員がやる気になるために、計画はチャレンジングでなければならない。
先行きが見えない経営環境にあっては、現状の延長線上で考えると現状維持が精一杯となる。そこからは小手先の対策しか出てこない。
まず、「あるべき姿」を描こう。それから逆算して何をすべきか考える。現状とのギャップが戦略テーマであり、そこに抜本改革の知恵が眠っている。ユニクロを経営するファーストリテイリングは5兆円企業を目指している。戦略経営の極みと言えよう。

3.蓋然性~金融機関の視点

どんなに崇高なコンセプトを掲げても、いかにチャレンジングな戦略を描いても、「画に描いた餅」では意味がない。金融機関の視点で確実な策を講じることも重要。売上アップは「相手ある」の話なので、蓋然性は低い。社内でできるコストダウンの着眼が必要である。

事業戦略は選択と集中である

運送会社のM社は、事業を「選択」し、「集中」させて好業績を残している。

1.専用車輌への切り替え

従来の万能トラックではなく、重い・長いに特化した車輌への切り替えを図り、専門技術・ノウハウを構築。経験を積むことで荷物の特性を熟知し、さらなる運送品質を高めている。

2.コスト価値をかえる車輌の導入

通常、荷物を運ぶシャーシ(車輌)は20tであるが、M社は大重量の30tシャーシを導入した。80tの資材であれば20tシャーシ4台が必要であるが、3台で可能となった。1台あたりの単価はあがるが、使用台数を減らすことができたのである。 顧客視点で考えれば安全でコストをかけたくないものである。だからこそ1台あたりの単価はあがっても、トータルではコストダウンになる。
"tあたりいくら"が取引の常識である業界において、顧客のコストダウンに貢献している。

3.営業プロジェクトの立ち上げ

自社の品質体制、エコへの取組みなど、他社とどう違うかの資料を作成し、新たな顧客開拓に閉鎖的な業界の中で営業機能を強化した。

事業戦略は、T(テクノロジー:固有技術)×M(マーケット)である。自社が誇る技術(商品・ノウハウ)をどのマーケット(市場)にぶつけるかである。だからこそ、自社の誇れるものを集中して磨き上げ、どのマーケットを選択するかを見極める「選択」と「集中」が必要なのである。

明確な方針を打ち出す能力とは?

人間、なかなか「捨てる」ことはできない。企業を経営しているのなら、この売上も欲しいし、あの売上も欲しい。今回のケースなら、客数も増やしたいし、客単価も増やしたい。

「二兎追う者は一兎をも得ず」という。戦略の要諦で言えば、「選択と集中」が大切だ。集中しなければ、どちらへも十分に前進することができない。

マクドナルドの場合、「客数を増やす」という方針の下、「100円メニューの拡充」、「朝食や昼食後向けの新商品発売」、「コーヒー券の無料配布」といった具体策を打ち出している。
「客数を増やす」という方針に集中するから、そのための「あの手この手」が充実する。ここまでやるか、というくらいにやれば、たいていのことなら成果は上がる。

明確な方針を打ち出し、「選択と集中」を実現するには?
「選択肢」を挙げる必要がある。

単純に「売上を増やす」ではなく、「顧客数を増やす」か「客単価を増やす」に分解することができなくてはならない。
施策を打ち出すには、「顧客数を増やす」ための要素を分解し、挙げていく。その中で効果の高そうなものから順に選び、実行していく。

そう考えると、「明確な方針を打ち出す能力」というものがあるとすれば、それは、本質を見極めたうえで成果を上げる要因を分析し、列挙し、評価する能力にほかならない。

基本と成長の4Cとは?

業務革新は
「絶えず『顧客の視点』から経営をチェックする機能が、自社に組み込まれているか」が出発点

各社はいろいろな業務革新 に取り組んでいるが、トップの意思の中心は自社の業務改善であり、顧客視点での業務革新に至っていない事例が多く見受けられる。

流通業を例に業務革新2つの視点

1.基本条件からの視点:基本の4C
中堅マネジメント層が取り組むべき重点課題

(流通業界で戦う中、有無を言わさず備えていなければならない条件)

  1. クリンリネス:Cleanliness
    お客さまを清潔な店舗で迎える体制になっているか。
    (お客さまは清潔かどうかを絶えず相対比較で判断する)
  2. コンビニエンス:Convenience
    お客さまから見て買いやすい品揃え、売り場になっているか。
  3. カスタマーサービス:Customer Service
    感じの良い接客ができているか。
  4. コンフォータブル:Comfortable

(1)~(3)の実践と、音楽や空調などの環境提案により、お客さまが心地よく買い物ができる環境をつくっているか。

2.成長条件からの視点:成長の4C
「成長の4C」はトップマネジメント層が取り組むべき重点課題

  1. コラボレーション:Collaboration
    取引から「取組」への仕組みができているか。
  2. コントロール:Control
    マネジメント体制の確立ができているか。
  3. キャビネット:Cabinet
    マネジメントメンバーの育成は明確になっているか。
  4. キャッシュフロー:Cash Flow
    指標経営の確立ができているか。

経営革新の最重要テーマは「顧客視点での業務革新」と言えるのではないだろうか。

プロジェクト成功の秘訣

ノーベル経済学賞を受賞した故ハーバート・サイモン教授が「計画のグレシャムの法則」なるものを著書の中で提唱し、プロジェクトに取り組む組織へ興味深いアドバイスを与えている。いわく「ルーティンワークは、ノンルーティンワークを駆逐する」。

ルーティンワーク⇒
日常業務や通常業務を意味し、毎月あるいは毎日反復して行われる業務

ノンルーティンワーク⇒
非日常業務・非通常業務を意味する。すなわち、プロジェクトタスクやクリエイティブワークのこと

プロジェクトの遂行やクリエイティブな業務といった仕事が、企業の成長や革新にとって最も重要な要件であるにもかかわらず、担当者が日常業務に忙殺されて計画通りに進捗しなかったり、クオリティーが低下したりすることはよくあることだ。
そこで、プロジェクトを成功させている組織に共通する姿勢と取り組みを、以下に列挙する。参考にされたい。

プロジェクトを成功させる姿勢と取り組み

  1. トップのプロジェクトに対する強靭な意志力
  2. プロジェクトの具体的目的・目標の設定
  3. プロジェクトリーダーの権限の明確化
  4. メンバーのプロジェクトへの専業体制
  5. 通常の評価制度とは一線を画したプロジェクトメンバーへの評価基準の設定
  6. プロジェクト終了後のメンバーへのキャリア保証

企業体質改善の着眼点 3現・3即・3徹

改善・改革の心構えとして「3現・3即・3徹」という言葉がある。この意味は次の通り。

3現・・・現場・現実・現物

何かを変えたい!」と思ったら現状を知る必要がある。その時は、現場に出向き、現状の姿を捉え、具体的な事象を見て聞いてまとめるのである。そして全員が納得するまで原因をしっかり追求し、改善策を立てることが重要である。
そこまでして初めて3現が実行できたといえる。

3即・・・即時・即座・即応

「何か異常が起こった!」時には、すぐにその場で対応する癖をつけるべきである。異常だけでなく、「沢山の仕事をこなす時」もそうである。
すぐにその場で処理し、決して仕事を溜め込んではいけない。毎日コツコツと処理していけばほとんどこなすことができる。

3徹・・・徹頭・徹尾・徹底

「3現・3即・3徹」を普段の仕事の中で意識し、実行したいものである。

「あきらめようかな?」と思ったら、徹頭・徹尾・徹底を自問自答していただきたい。これは「最初から最後まで徹底的にやりぬく!」、「とにかくやり通す!」という意味である。この迫力を常に抱いた前向きな人材が実に少ない。そのような人材を育て上げた企業は活き活きしていて風土も良い。また平均年齢が高くても活力があり、不況でもめげない強さがある。

企業体質を転換する5力とは?

経営環境が急変する中、自社の事業戦略の再構築を進めている企業は多い

どれだけ精緻な攻めの戦略を構築しても、それを展開するだけの企業体質が備わっていなければ、戦略の実行は図られないものである。

企業体質とは

  • それぞれの企業で培われた社員の意識や行動スタイル
  • 経営者の価値観、業種特性
  • 組織体制
  • 評価の仕組み
  • 外部からのイメージ
  • 顧客の要求内容

などによって形成されるものである。

そこで提案したいのが「企業体質の転換」である。

A社の体質転換5力

  1. 徹底力:会議の決定事項の実行度を、幹部が1週間後に店舗に訪問チェックする
  2. 変化対応力:全店舗四半期に一度、店内のレイアウト変更を実施する
  3. 現場力:幹部社員は月2回、店舗業務支援(店内販売業務)を実行する
  4. 共有化力:毎週1回幹部ミーティングを行い、現場情報を共有する
  5. 付加価値創造力:1人当たり月粗利100万円(現状70万円)に向けた取り組み強化

以上がA社の体質を転換させた「5力」である。あなたの会社の体質はどうであろうか?体質転換が必要であるならば、ぜひ自社の「5力」を見出すことをおすすめしたい。

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