取引のある売掛先の管理について
起きてしまった未収金に対する対処法を学んでおくことも必要ですが、それ以前に、どうしたら引っ掛からないのかを学ぶことはより重要になってきます。
どのように危険を察知するのかについて、既に取引のある売掛先の管理という点にスポットを当ててお話しましょう。
重要なポイントはいかに他社よりも早く危険な兆候を掴むことができるか
他社が先に気付いて回収のアクション、例えば財産への差押えなどを行ってしまえば、その取引先は倒産の危機に陥ることも考えられます。仮にそうなれば、あなたの会社は取りっぱぐれることになり兼ねません。
こうしたことを防ぐためにも、また、相手にまだ体力があるうちであれば、円満に解決できる可能性が高いということからも、いかに早く危険兆候をつかめるかが重要になってくるのです。
そう考えていくと、誰がその兆候を感じ取れるのかというと、必然と絞られてきます。
営業の形態にもよりますが、取引先と日頃コミュニケーションを取っているのは営業マンです。
そして、営業マンの仕事の定義を、単に受注を受けて売上を上げてくるだけでなく、その売上を回収するところまでが仕事である、とキチンと定めることです。
営業マンは取引先のどんな点に注意を払えばいいのでしょうか。
まず、情報の入手先ですが、
- 取引先(社長・役員・経理財務担当・営業担当・総務など)
- 同業者
- 取引先の販売先
- 業界団体
以下のような例が危険兆候と捉えられます。
【営業面】
⇒販売先に変化があった
- 主要な販売先が倒産した
- クレームから主要な取引先に取引を停止された
⇒仕入先に変化があった
- 主要な仕入先がかわった
- 理由なく注文が大幅に増加した
- ライバル会社への発注分が急にこちらにくるようになった
⇒商品構成が大幅に変わった
- 旧来の仕入先に未払いが発生し、仕入できなくなったために新しい仕入先が入ってきた
⇒在庫が積み上がっている
- 商品・製品にクレームが多く返品が多い
- 売れいきが悪く在庫が積み上がっている
⇒本業に関係ない事業に手を出し始めた
⇒新規事業や関連事業がうまくいっていない
【財務面】
⇒支払日が遅れた・変更された
⇒回収額が約束と違った(請求書どおりに払わない)
⇒支払方法変更の申し出があった(現金・小切手から手形へ)
⇒手形サイト延長の申し出があった
⇒主取引銀行が変わった(支払銀行の変更)
⇒脱税等の不正で摘発された
⇒ノンバンクからの借入の噂
⇒保証金取崩しの申し出があった
⇒経理責任者が支払日に不在がちになった
⇒小口払いはするが大口支払は延ばそうとする
【人の面】
⇒経営者が不在がち
⇒経営者夫婦が離婚した
⇒経営者や幹部社員が高級外車を乗り回しているなど生活が派手
⇒社内で内紛が起こっている
⇒幹部社員が退職した(特にNo2や経理財務担当者が重要)
⇒従業員の活気がなく、仕事が投げやりになってきた
⇒従業員が会社の文句ばかり言っている
⇒従業員の定着性が悪くなった
⇒ハッタリをきかせた大きな話ばかりするようになった
※あくまでも一例ですが、財務面は、すぐに倒産する危険もある兆候ですから、十分な注意が必要です。
※営業面と人の面は、すぐに倒産とまではいかないまでも、業績悪化の懸念材料としてチェックしておく必要があります。
そして、これらを組み合わせて状況を判断して下さい。
例えば既に人の面と営業面に危険兆候が表れていて、ここにきて、支払を遅らせてほしいと財務面の危険兆候まで出た、ということであれば、これは本当に危ないということで判断もしやすくなります。