工務店におけるキャッシュフロー経営とは
「勘定合って銭足らず」よく耳にする言葉ですよね。
帳簿上では利益が出ているのに、なぜか金が無い状態を言い表しています。ただ、やっかいなのが建設業の場合、「勘定も合っていなし、金もない」という会社が結構多いんです。
こんな会社でも、最悪、キャッシュフローだけ意識して経営していたなら、何とか持ちこたえることができるかもしれませんが。
一般的に「キャッシュフロー経営」とは、キャッシュフロー計算書により、現金の流れを重視して、現預金残高を大きくしていく経営のことです。
このキャッシュフロー計算書は上場企業だけに作成が義務づけられていて、
1.営業活動によるキャッシュフロー
2.投資活動によるキャッシュフロー
3.財務活動によるキャッシュフロー
が判るようになっています。
重要なのは、1の営業 活動によるキャッシュフローを意識して経営を行うことです。
いま中小工務店がやらなければならないことは「資金繰り表」の作成です。
少なくても3~6ヶ月先の資金計画ぐらいは把握できるようにしましょう。私が担当している工務店さんには、資金繰り表でも「日繰り表」を毎日付けて貰うようにしています。
いつ、どこに、いくら支払うか、予定を入れ、日々実際の入出金に合わせてメンテナンスをします。
ここで重要なのが、把握できている範囲で出来るだけ先の予定を入れる事が鍵だということです。
受注工事が増えたら、都度メンテナンスをして、おおよその金額と支払い時期がわかるようにしておきます。
これによって、土壇場で慌てることなく前もって資金繰りが考えられます。
この日繰り表は、出来ることなら社長さん自らが作成して欲しいものです。
中小工務店の場合、結局、資金調達は社長さんの仕事でしょうから、頭の中に"日繰り"をたたき込んでおきましょう。
元請け、下請け、どっちが良いの?
「ゼネコンを目指した」、一、専門工事業者がありました。
専門工事業者ですから、とび・土工、鉄筋、型枠・・・と、数多くの業種があるわけですが、その一職種に特化した下請会社が、元請会社である、ゼネコンを目指したというわけです。
この会社の社長が言うには、ゼネコンの元社員で、現場で施工管理をやっていた技術者が入社したことで、建築一式工事を請けたそうです。詳しくは言えませんが、その現場で契約上のトラブルが発生し、請負金を巡って訴訟中となっているらしく、当然、かなりの金額が滞っているので、経営的に窮地に立たされています。
- 出来るからやるのは「建設者」の発想であり、発注者との合意を、法律に則って履行する「契約者」としては如何なものでしょう。やはり、一度原点に戻って事業の立て直しを考えるべきだと話しました。
- 繰り返しになりますが、ゼネコンになるということは、発注者と約束した建物を、約束通りの「価格」で「安全」に「工期」内で造らなければならないということです。 それではじめて約束した「金額」を受け取れる権利を主張できるのです。
ただし、例え、約束した「金額」を受け取れない場合でも、下請け業者には、請負代金の支払いなど、約束を履行しなければなりません。 - 私は下請け業者が、元請けを目指すのは悪いことだとは思いません。 実際、下請け業者でも三次下請けであれば、二次を目指し、二次は一次を目指すべきだと思っています。しかし、そうなるには、そうなる資質を備えていかなければなりません。何事も一足飛びにはできないのです。
財務を立て直すこと、それから地に足のついた「事業再生計画」の策定を第一にするべきです!
建設業の再生方法
建設業は、1件1件の工事でどれだけ利益を出していけるか、がその企業のトータルの利益を決める業種であります。
粗利管理の重要性
- 原価積算の正確性、外注や材料費の相見積りによる原価の抑制、十分な利益を確保した見積り提示、が重要。
- また、それとともに、施主や元請け先からのサービス工事、つまり追加工事をサービスで引き受けないことも、利益確保の上で重要になってきます。
- 工事ごとの粗利管理をしっかり行わないと、1件1件の工事において利益がほとんど確保できなかったり、もしくは赤字工事になったりして、その企業は苦しい状況に追い込まれてしまいます。
予算実績管理
- 必ず予算と実績の比較を行っていますでしょうか。
- 実績でどれだけ原価がかかったかを見ないと、予算の設定が適正であったのか検証することができず、今後の粗利管理に生かしていくことができません。
- 予算実績管理を行わないと、サービス工事のこわさが分かりません。
サービス工事を行うと、とたんに利益は少なくなります。粗利管理を行わないと、これが分かりません。
例を見てください。1年で工事が5件ある企業だとしますと
工事名 売上 原価 粗利益 (単位:百万円)
工事A 150 120 30
工事B 70 60 10
工事C 90 70 20
工事D 130 120 10
工事E 80 60 20
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合計 520 430 90
この企業の共通経費が80百万円だとしますと、この企業の利益は90-80=10百万円、となります。 1件1件の工事で粗利益を稼いで、共通経費をまかなうイメージはこのような感じです。
ところが、工事Aにおいてサービス工事を請けてしまい、その分の原価が20百万円かかったとしましょう。
そうすると、工事Aの粗利益は10百万円となり、この企業の1年間の利益は△10百万円となってしまいます。
サービス工事を安易に引き受けず、20百万円をせめて追加請求していれば、赤字の転落はなかったです。 このように、サービス工事は、その企業の業績を一気に悪化させます。簡単に請けてしまってはいけません。
建設業の再生のためには、一にも二にも、工事ごとの粗利益の改善です。
建設業における公共事業と民間事業の戦略
同業他社と競争し、高額商品である住宅(もしくは大規模修繕リフォーム)のご契約をいただくために、第一に検討しなければならないポイントを申し上げます。
1.自社の会社としての『強み・弱み』は何か?を考え、自社の強みをどう生かすことができるか?
2.誰(どんなターゲット層)に、何(どんな住宅・リフォーム商品)を、どのように販売することができるのか?
必ず、1が最初でなければいけません。
なぜならば、自社の状況を検討し、戦略を練った上で、そのターゲットに向けた情報を発信しなければ、集客も契約もできないからです。
例えば、ターゲットとすべきは、30代や団塊世代を狙うべきだ、自然素材を売りにした住宅を販売すべきだ、オール電化や太陽光発電などエコ商品をターゲットにしたら良い!と、コンサルタント会社からの提案を受けて2からスタートすると...
オール電化や太陽光発電等世間で注目されているから、というだけでは、同じものを取り扱っている会社はたくさんありますので、お客様からお問合せをいただいたとしても、ご契約できるかどうかはわかりません。価格競争にさらされる危険性が高いです。
営業的な入口は、あなたの会社の特徴(=強み)は、ハッキリとした他社との差別化をどう打ち出せるのか?の検討がなければ、成果を出し続けることはできません。
新規事業へのシフトをお考えになる場合には、現在の事業の財務面も併せて検討することが重要です。
まずは、現状の財務の問題点・改善点を検討した上で、現在の資金繰り表を作成し、最低でも6か月、基本的には12ヵ月先までの収支を確認します。
なぜならば、例え、今すぐにご契約をいただいても、着工は早くて3か月先、基礎工事からお引渡まで、4ヵ月の工期として、支払の多くは上棟後発生し、それからお引渡後2ヶ月程度まで発生し続けますので、契約前にその工事の支払が全て終了するまで原価・工程管理の中で利益額(率)を把握し続けることが大きなポイントとなります。
なぜならば、お客様との基本的な金額の同意は契約時に決まりますが、利益は全ての支払いが終了した後に確定するのですから。
自社でお建ていただくお客様を集客するための広告宣伝費(顧客獲得単価)契約までの追客コストを把握していなければ、利益確保は覚束ないのです。
すべてにおいて毎月の予算実績管理を徹底していく必要があります。
つまり、あなたの会社を発展させるには、『財務』と『売上向上』が全て一体となった計画=戦略がなければ、成功できないとういうことです。どちらか一方だけではいけません。