やってはいけない融資ノウハウ

将来期待できる商品や技術

銀行員が、よくうのみにするのが、「将来期待できる商品や技術」です。
銀行員は、その分野の専門家ではありません。あらゆる業種と融資取引をしており、ある特定の分野で専門的な知識がある、というわけではないのです。
そのため、この商品や技術は、将来このように広がっていく、というような事業計画を、もっともらしく書けば、銀行員は「すごそう!」とうのみにします。

そのため、いかに、斬新な商品や技術を、それが将来どれぐらいの売上増加につながるか、銀行にアピールするかは、銀行から融資を引き出すための有効な手段ということになります。
それで通常は融資が出ない会社でも、融資が出てしまうことは多いのです。

しかし!
事業が赤字でも、将来性が期待できる商品や技術をアピールした事業計画を見てもらって出た融資は、ほとんどの場合、赤字の補てんに消えてしまいます。
そうなると、借入金はふくらんでしまう一方。
残ったのは莫大な借入金と、赤字体質のままの事業、ということになります。

あなたの会社は、このようなことになっていないか、見直してみてください。

余計なことにお金を使わないで!

資金によほど余裕のある企業ならまだしも、そうでないのであれば、余計なことにお金を使えないはずです。資金繰りが厳しいのは、本業とは関係のない、余計なことにお金を流出させてしまっていることがひとつの要因であるケースは多いです。

貸借対照表を見れば、その会社はどのようなことにお金を流出させているか、分かります。

  • 知人の会社や、個人から頼まれてお金を貸すこと。
    ⇒知人の会社や個人への貸付金
  • 儲け話が舞い込んできて投資をしてしまったこと。
    その事業や事業会社への出資金や有価証券、貸付金
  • 事業の見通しが立っていない新事業のために別会社を作りそこにお金をつぎこむこと。
    ⇒別会社への出資金や貸付金
  • 社長個人での、遊びや贅沢、投資話のために社長にお金を出すこと。
    ⇒社長個人への貸付金
  • 必要もない不動産を、ただ不動産を所有したいという所有欲のためだけで買うこと。
    ⇒過大な有形固定資産

負債の部を見ると、借入金勘定があります。

貸付金(知人の会社)25百万円
貸付金(赤字の別会社)30百万円
出資金(赤字の別会社)20百万円
借入金が200百万円。としますと、借入金200百万円のうち、75百万円が、余計なことに実質的に使われていると見ることができます。 このような余計なことにお金を使わなければ、この会社の借入金は125百万円ですんでいるはずです。

銀行はお金をあげるのではない

  • 赤字の会社に、銀行は融資をしません。私の会社は、あくまで正攻法で、中小企業の資金繰りが円滑にまわるように、取り組んでいます。赤字の会社には、どうやって資金繰りがまわるようにするか、あらゆる手を考えて実行していきます。
  • 資金調達第一、ではありません。裏技みたいなものはありません。
  • 裏技・テクニックを追い求めても、それがたまたま、一時的には功を奏すかもしれませんが、効果は短期間です。裏技があったとして、融資を受けられても、業績が悪いままであれば融資を受け続けるのにも限りはあります。

しかし

多くの経営者は、その正攻法を実践し、資金繰りがまわるようになっています。
正攻法と言っても、資金繰り困窮時で資金繰りをまわす方法なので、経営者には聞いたことがない方法を伝えています。ただ、会社が生き残っていくためには、こんな方法やりたくない、なんて言っていられないでしょう。

経営者としては、

○資金繰りをまわすためにはどうすればよいか。を考えていくべきであって、
×資金調達をするためにはどうすればよいか。
を第一に考えてはいけないのです。資金調達のことを全く考えないわけではなく、資金繰りをまわすために資金調達もひとつの方法として考えるべきです。

取引銀行を絞る?

連日、多くの中小企業経営者様からご相談をいただきますが、その中で、取引銀行を集約、もしくは1行に絞りたい、という話もよく聞きます。

例えば、次のようなイメージです。
現状の借入
A銀行--1億3千万円
B銀行--5千万円
C銀行--2千万円

こちらを、次のように集約
A銀行--1億3千万円
B銀行--7千万円(C銀行の融資を借換)

もしくは、次のように集約
A銀行--2億円(B銀行・C銀行の融資を借換)

しかし、こんなことは、行わないでください。
銀行とのつきあいにおいて、取引銀行は多く持つことは、鉄則です。
そうしないと、次のようなデメリットがあります。

  • ある銀行に融資を申し込んで断られた場合、他に取引銀行がなければ別の銀行に融資を申し込むことはできない。
  • 優良な企業であれば金利引下げを交渉できるが、取引銀行が少ないと金利の競争相手がなく、金利は高止まりとなってしまう。
  • このように、取引銀行を集約することは、デメリットばかりでメリットはありません。

そもそも、優良な企業でないかぎり、集約しようとする銀行は、他の銀行の融資の借換を引き受けないことでしょう。

銀行から常に融資を受ける必要がある企業であれば、融資を申込む金融機関の選択肢を自らせばめることは、やってはならないのです。選択肢は広げていくことが、鉄則です。

資金があと1か月もつかどうか・・・

【1】この場合、まず、頭の中を
「通常の資金繰り → 緊急の資金繰り」に切り替えてください。

【2】入りを増やすために資金調達の手段をいろいろとっていくとともに、出を減らすために、優先順位をつけた支払いを行います。

【3】全て支払いを行うと、資金がショートします。そのため優先順位をつけた支払いを行い、一方では優先順位が後の支払いは支払先に対して待ってもらう交渉を行うことによって、資金のショートを防いでいきます。では、支払いの優先順位はどうやってつけていったらよいのでしょうか。

【4】そもそも、中小企業が、資金が出ていくのは、大まかに分けて次の5つです。

  1. 銀行返済
  2. 社会保険・税金
  3. 経費
  4. 買掛金(仕入・外注)
  5. 給与
    この中で、支払いの優先順位が高い準に、5→4→3→2→1です。

このように考えると、「緊急の資金繰り」においては、銀行返済や社会保険・税金の支払いは、優先順位は後でもよいのです。 一方で、銀行などへ、支払い条件の緩和の交渉をしていきますが、まずは緊急事態なので、交渉の前に延滞するのです。

融資申込みに必須の「資金使途」

融資を申し込むにあたって、銀行から必ず「資金使途」というものを聞かれます。
資金使途には、大きく2つに分かれます。
・設備資金・運転資金

設備資金:
設備資金として融資を申し込むにあたっては、必ず、その設備の見積書等、証拠書類が求められます。
そして融資がおりたら、その資金を、支払先へすぐに振り込むことがが求められます。
また、後日、融資によって手に入れた設備を、銀行員が確認に行くこともあります。

運転資金 :
運転資金は、資金繰りに使われるための資金なので、何に使うか、証拠書類を出すことはできません。
そのため、運転資金として融資を受けたい場合は、その旨を銀行に伝えるだけでよいことになります。将来6ヶ月~1年ぐらいの予定資金繰り表を作り、融資を受けるとどう資金繰りがまわるか、銀行に伝えると、審査においては多少、有利になります。
運転資金といっても、その資金の支払先が決まっている場合もあります。

例えば、建設業によく見られる、工事引当の資金。
工事の、外注費や材料費の支払いが先行し、入金が後になる場合、企業の資金繰りは大きな負担になります。
そのため、工事の発注書や契約書などを証拠書類として、入金予定日に一括返済をすることを約束して、融資を受けます。

例えば、季節ごとに売上の増減が激しい業種を対象とした、季節資金。

例えば衣服製造業で、冬のシーズンに向け夏のうちに衣服を製造し、在庫として蓄えておく、このような場合には夏の時期にいろいろな支払いが先行しますが、その時期に融資を受けて、冬のシーズンに売上を上げて資金を回収し、それを返済にあてます。短期の融資となります。
また、賞与資金や納税資金として、融資を受けることもあります。
これらは全て運転資金の範ちゅうですが、何に使うかが明確なので、証拠資料を出すことができます。工事引当の資金であれば発注書や契約書、季節資金であれば製品や商品の製造・仕入→販売計画や昨年の実績、賞与資金であれば賞与支給予定の計算書、納税資金であれば税理士から出される 納税予定などです。

とすると、単なる運転資金として融資を申し込んだ方が面倒くさくなくてよいのでは、ということになりますが、資金使途をしぼった運転資金として融資を申し込むと、審査が有利になるのです。

なぜなら、資金の使い道がこの場合はっきりしているので、銀行としては 融資を出しやすいのです。設備資金も同じです。

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