やってはいけない決算時ノウハウ

粉飾決算がばれるとどうなる?

  • 銀行は、粉飾決算が分かった場合の対応として、特に取り決めはしていません。
  • 銀行は次のように対応してきます。上の段階から下の段階にかけて、厳しい対応、ということになります。

【第1段階】新規融資は出さないようにする。
【第2段階】既存の融資の一括返済を求めてくる。
【第3段階】経営者や、場合によっては粉飾決算を作った税理士に、貸倒れた融資の損害賠償を求めてくる。
(融資が出た時の決算書を作った税理士が損害賠償を請求されます。)
【第4段階】詐欺罪として刑事告訴してくる。

これら、どの段階の対応かは、・粉飾決算の度合い(どれぐらいの利益や資産勘定を上乗せしていたか)粉飾決算で受けた融資の量 などによって、支店と審査部との話し合いの上、銀行は決めます。
ほとんどの場合、第1段階、せめて第2段階までです。第3段階や第4段階はめったにないでしょう。

またこれらリスクよりも、私が重要なリスクと考えることがあります。

それは、通常は融資を受けられないような企業が、粉飾決算で融資を受けることによって、経営者は安心してしまい、経営改善を後回しにすることです。
粉飾決算は、それがばれた時のリスクも高いのですが、それ以上に、粉飾決算が問題の先送りを引き起こし、企業がどうしようもない状態までなってしまうことの方がリスクが高いのです。

銀行は粉飾決算をどう見破るか

どうやって見破られたのかというと、

ケース1:
信用保証協会で審査を行ってもらおうと信用保証協会に決算書を提出 したが、他の銀行から提出された決算書が違っていた。

ケース2:
銀行に提出された決算書が、前期と当期で、数字のつながりがなかった。

銀行の支店は、大きく「得意先係」「融資係」「預金係」と分かれます。
得意先係---企業に営業して、融資案件をとってくる「攻め」の立場。
融資係---融資審査にあげられた案件の審査を行い、貸倒れが増えないようにする「守り」の立場です。

  • ほとんどの銀行では、決算書をコンピュータで分析して粉飾の可能性を探るソフトがあり、全ての融資先の決算書を分析しています。
  • 他に経営者への質問や実地調査などによって、銀行は、粉飾決算を見破るために、いろいろな取組みを行っています。

粉飾が判明したらその後の融資はいっさいストップ、回収をはかっていく、という流れになります。

税金や社会保険を滞納してしまっている

資金繰りがまわらず、法人税・消費税・従業員からの源泉徴収分など、税金を滞納してしまっている企業、社会保険事務所に支払わなければならない社会保険料を滞納してしまっている企業があります。

税金や社会保険料の滞納をそのままにしておくと、税務署や社会保険事務所は、あなたの会社の財産に「差押え」をかけてきます。

  1. 預金口座を差押えようとしてもそこには資金がないので、まずねらわれるのは所有している不動産、です。
  2. 不動産が差押えられても、依然滞納の解消ができない場合、競売手続きを進めてきます。そして不動産を、税務署や社会保険事務所の手で、処分されてしまいます。
  3. また、不動産とともに税務署や社会保険事務所が差押えをねらってくるのが、売掛金、です。そもそも不動産を所有していない企業は、売掛金が真っ先にねらわれることになります。

売掛金が差押えられると売掛先に対し、差押えの通知がいくことになります。
そうなると、その売掛先は、あなたの会社が倒産間近の企業として、警戒してくることになります。売掛金の差押えをきっかけに取引が解消となれば、あなたの会社は商売を続けられなくなります。

税金や社会保険が滞納してしまったら、何よりもやらなければならないのは税務署や社会保険事務所との交渉です。

社員への給料が支払えないかも・・・

まず、銀行返済を止めることによって、給与支払いの資金は捻出できないか、考えてみます。。

多くの企業の場合、これで問題解決する場合は多いです。銀行の返済を止めても商売は続けられますが、給与の支払いを止めると商売は続けられません。その後、銀行とリスケジュール交渉を行っていきます。
それでも給与支払いができない場合、どうするか。

給与支払いの中で、支払いの優先順位をつけます。
経営者の給与は当然、後回しにします。
次に、役員です。役員は経営側の人間であり、このような非常事態の場合にこそ、協力を求めるべきです。
そして、一般社員の給与を最優先に考えます。

それでもまだ足りない場合。
この場合は、社員に説明して、給与の遅配に理解を求めるしかありません。
肝心なのは、次の3つです。

1.経営者がおわびの姿勢を見せる。
給与の遅配という事態が起きると、当然、社員は不安に思うことでしょう。感情的になる人もいるでしょう。
まずは経営者が頭を下げることによって、社員の高ぶった感情を抑えるのです。また、経営者が頭を下げることによって「社長も大変なんだ。」という同情心を社員に抱かせ、今後の給与支払交渉をしやすくします。

2.いつに給与が支払いできるのか、日付を提示する。
社員の不安は、給与が支払われないこともそうですが、いつ支払いされるのか、ということにもあります。 いつ、給与が支払いできるのか。それを提示することによって、社員の不安をある程度抑えることができます。
ただやってはいけないのは、資金繰り計画も立てず、感覚だけでこの日は支払いできるだろうと、支払い日を提示することです。
一度提示した支払い日は、遅らせることはできないものと思ってください。確実に支払いできる日を検討し、給与がいつ支払いできるのかを社員に提示してください。

3.一部でも支払いをすることによって、支払いの姿勢を見せる。
社員の不安は、経営者が給与支払いを遅らせると言っても、経営者は本当に給与の支払いをしようという気があるのか、というところにもあります。
例えば25万円の給与の社員がいる場合、その社員に、給料日に5万円でも支払いをしておくことによって、経営者として、必ず給与は支払う、という姿勢をアピールすることができます。
全社員に全額、給与を支給できないのであれば、いくらなら支給できるのかを考え、一部でも給料日に支払うことにより、社員の不安を抑えることができます。

このように、給与が給料日に支払えない場合、まずは社員の気持ちを考えた上で行動していくことが、この困難を乗り切るために重要になります。

新しい決算書が出たら、銀行のスタンスを見る

決算期が過ぎ、新しい決算書ができあがったら、やってみるとよいことがあります。 特に、前回の決算書より、今回の決算書の方が内容が悪い場合。新しい決算書をもとに、銀行に融資を申込んでみて、銀行のスタンスを探ってみてはどうでしょうか。

信用保証協会保証付融資は1行だけにしか申込めないので、どの銀行に申込んでみるかは状況を見て検討しなければなりませんが、プロパー融資やビジネスローンは、どの銀行にも一斉に申し込んでみることができます。
実際に借りる借りないは別にして、銀行の融資審査がどうなるかを見ることによって、新しい決算書で、融資が出るかどうか、を探るのです。

新しい決算書で、融資が出る銀行もあれば出ない銀行もある、ということならまだしも、ほとんど全ての銀行で融資が出ない、ということであれば、次の決算書が出るまでの1年間は、銀行からの資金調達がほとんど期待できない、ということです。

その場合、キャッシュフロー、つまり事業で稼いだ現金で、毎月の融資返済がまかなえるかどうか、がポイントとなります。
預金が減り破綻が予想されるのであれば、早急に対策をうつ必要があります。 リスケジュール、つまり銀行に交渉して、毎月の返済金額を減額してもらう手が考えられますが、専門家に相談すべきです。

売上が月ごとに大きく増減する会社の経費削減のやり方

企業の中には、売上が月ごとに、大きく増減する企業があります。
そのような企業が損益を改善させるポイントは、売上の増減による影響を極力少なくするにはどうするべきか、です。

事業活動にかかる費用には「固定費」と「変動費」とがあります。
固定費とは売上の増減にもかかわらず一定にかかる費用、変動費とは売上の増減に比例して変化する費用のことをいいます。

固定費の割合が高い企業(社員の給料):
売上が落ちるとき、利益も大きくマイナスとなります。なぜなら、売上の 増減に比例して変化する変動費の割合が小さいため、売上が落ちると固定費の負担が一気にのしかかってくるからです。

変動費の割合が高い企業(材料費・外注費・仕入原価):
売上が落ちるとき、利益の減少は、固定費の割合が高い企業ほど大きくはありません。なぜなら、売上の増減に比例して変化する変動費の割合が大きいため、売上が落ちると変動費としてかかる費用も落ちるからです。

そこから考えると、月ごとの売上の増減が激しい企業は、売上が落ちても利益への影響を少なくするため、費用の中で変動費の割合を高く、固定費の割合を低くすることが、セオリーとなります。

(例えば)
製造業。受注状況によって、売上が大きい月もあれば小さい月もある企業が大半でしょう。
固定費の代表的なものは社員の給料、変動費の代表的なものは外注費です。

私どもが相談を受ける製造業で、赤字企業の特徴を見ると、売上が大きい月に合わせた人員構成となっている、ということです。 売上が大きい月に、製造部門がスムーズにまわるように、人員を入れています。
ただ、そのような状態では、売上が小さい月には、余剰人員がでてきてしまうことになります。製造部門の社員に、仕事がない人が出てきてしまうのです。 余剰人員、余剰時間が発生するということは、その分、会社の費用負担は大きく、そこで赤字を発生させてしまう、ということになります。

これが、赤字の製造業の企業でよく見られる特徴です。
そのような企業は、売上が小さい月でも、利益が大きく赤字にならないように仕組みを変える必要があります。
そこで、製造部門をスリム化し、売上が小さい月でも余剰人員や余剰時間が発生しないぐらいまで、人員を減らします。
そうすると、売上が大きくなった月は当然、人手が足りなくなります。そこは、外注でカバーします。
こうすると、余剰人員・余剰時間の発生を防ぐことができるため、赤字の発生を抑えることができ、その企業の損益は大きく改善します。

売上が小さい月をベースに人員を構成し、売上が大きい月は外注でカバーする企業は、固定費の割合が小さく、変動費の割合が大きい企業です。
売上の増減による影響を、こうすることによって小さくできます。安定した経営ができます。
今回は製造業を例にあげましたが、どの業種でも、同じことが言えます。

固定費の変動費化にひそむ問題と、その改善策

次に、建設業の会社を例に、考えてみます。
現場の正社員が5人いましたが、仕事の多い時と少ない時の差が激しく、人員構成を考えてみたら、正社員5人の体制は仕事の多い時に合わせた人員体制となっていました。
仕事の少ない時も同じように給料を支払わなければなりません。それで、仕事の少ない時は、人件費の負担が重く、赤字となっていたとします。
そこで、現場の正社員5人のうち、職長1人、他1人残し、3人に退職してもらいます。
一方、新たに外注として職人4人を確保し、その4人は仕事に出た日のみに変動費である外注費として支払うことにします。

固定費である正社員給料は削減できるのですが、一方で外注比率は高まりますし、必要な時にタイミングよく来てもらうことも難しくなってきたりします。
また時間単価で言えば、正社員の場合よりも、支払う費用が高くなりがちです。
このように、固定費の変動費化、つまり正社員に辞めてもらい、外注に変えていくと、毎日の職人の手配の負担は大きくなることでしょう。
また経営者としては、次のように考えることもあるでしょう。
「タイミング良く職人の手配ができないと、受注できた仕事をキャンセルしなければならなくなったり、そうするとその受注先からの仕事が今後来なくなってしまうおそれもあるので、無理してでも技術のない高い外注費の職人を連れてこなければならなかったり、それで時には利益が出なくなってしまったり、技術不足から補修などがかさんで赤字になってしまう場合もあるではないか。」 職人を手配し段取りをする職長の負担も大きくなることでしょう。

だからといって、仕事のピークに合わせて、正社員を増やしてしまえば赤字になります。
この例にひそむ問題は、管理体制、にあります。

  • 仕事の受注見通しはどうか、職人のスケジュールはどうか、ということを、職長、職人、もしくは経営者で、共有しておく必要があります。
  • 職長、職人、経営者間でGoogleカレンダーなどを使ってスケジュールを共有したり、全くパソコンが使えない人であれば1日1回は連絡をとってスケジュールを確認しておいたりするなど、情報共有手段はいろいろあるはずです。
  • 仕事が多い時に困るからと、余剰人員を抱えるのではなく、仕事が多い時でもいかに仕事の受入体制を確保できるか、その体制を構築することを考えます。
  • ある仕事に慣れない職人でも、職長が仕事の状況をチェックしておくなど、管理体制をしっかり構築することを考えます。

どうしても仕事が多い時に合わせた人員を確保したいというのなら

仕事の少ない時に、余剰の社員を余らせるのではなく、仕事の少ない時には余剰の社員を営業に出させるなど、時間を有効に使わせるべきでしょう。 「ふだんは現場の社員に営業をさせることなんてできないよ。」というのなら、仕事が少ない時に余剰社員が出てしまう人員体制はとるべきではありません。

仕事が少ない時に照準を合わせた、人員体制を心掛けるようにしてください。

決算書の貸借対照表は債務超過

しかし、役員借入金が多くあり、それを実質自己資本とみなすと、債務超過でなくなる。
だから、債務超過の状態はほっておいてもよい(と、顧問税士からアドバイスを受けている。)

債務超過、つまり決算書の貸借対照表において、純資産がマイナスの状態であるのは、銀行から融資を受けるにあたって、致命的です。
銀行融資の教科書的な本を読むと、決算書では債務超過であってもその超過額を上回る役員借入金があれば、それを銀行は実質自己資本とみなし、債務超過でない企業として扱ってくれる、ということがよく書いてあります。
しかし、それは机上の空論です。
やはり、決算書を見て債務超過であるのなら、その企業には融資を出しづらいのです。コンピュータが決算書を分析して審査するビジネスローンも、三井住友銀行のクライアントサポートローンという商品以外は、債務超過の企業は対象外なのです。例え債務超過額を上回る役員借入金があったとしても。

  • 役員が会社に貸し付けている貸付金を「債務免除」する、という方法があります。
    決算で、役員が債務免除して、それを債務免除益として計上します。
    こうして債務超過が解消となれば、決算書の貸借対照表において純資産がプラスとなります。
  • また、役員借入金を資本金に組み入れて債務超過を解消することもできますが、この方法についても税金のことを気をつけなければなりません。

はっきり言って、債務超過である企業、そうでない企業、銀行融資の審査において、天と地の差はありますよ。銀行からスムーズに融資を受けたいのなら、そこは、はっきりと意識を持ってください

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