借りられたのでなんとかなりました…
時折経営者から聞かれる言葉に、「借りられたのでなんとかなりました。」と言って連絡が途絶えてしまった企業の多くが、後に倒産しています。
問題の解決策は「銀行からお金を借りること」ではなく「経営を大きく変えること」です!!
たまたま銀行から融資が受けられたからといって、「借りられたからなんとかなりました。」と安心し、経営改革をやめてしまう経営者は、早晩、決定的な危機状態に陥ってしまうことでしょう。 経営者の、あの決意はなんだったのか・・・。あの時の決意を保っていれば、倒産することもなかったのに・・・。
自社を再生できる経営者は、たまたま銀行から融資が受けられたのであれば、「借りられたからなんとかなりました。」というのではなく「今回借入できたのは本当に運が良かった。これが最後のチャンスだと思って、経営を大きく変えていかなければ。」と思える経営者です。
厳しい状況の企業が、銀行から融資を受けられるのは、本当に運が良いことです。そこはゴールではなく、あくまでスタートです。そこで安心してしまうと、最後のチャンスをつぶしてしまうことになり、倒産へ突き進んでしまいますよ。
管理者不在
会社の規模が多少でも大きくなってくると、社長は社内の全ての業務にまで目を行き届かせるのは困難になるので、管理者をおく必要があります。それが、会社が個人事業状態から組織になっていく、第1歩なのです。
◇管理者は、その管理する業務が問題なく行われるように管理し、また必要に応じて、その上司もしくは社長に、報告を行う必要があります。
◇いろいろな業務において、その管理者を決めないでいると、はたしてその業務が問題なく、しっかり行われたかどうか、あいまいになってしまいます。
◇管理者(=責任者)がいないため、問題が起こっても誰にも注意できない状態となってしまいます。
管理者不在、ということから起こる現象
- いつのまにか売掛金未入金の総額がふくらんでしまっていた。
- 会社として重要な資産である顧客リストが作られていない。
- いつのまにか横領が発生していて会社のお金がごっそり抜かれていた。
こう考えると、管理者を決め、その管理者に権限と責任を与え、業務の管理をしてもらう体制をしっかり作ることは、会社の運営において大変重要なこととなります。
社長が全てを見る、ということは、会社がある程度の規模になってくると絶対に無理です。社長は部下に権限・責任を委譲していって、自分自身は会社を伸ばしていくための仕事に重点をおくべきです。
会社を再生させるための第一歩
資金繰りが厳しく、緊急状態に陥るとあせりが出て、経営者として冷静な判断ができなくなってしまいます。
そのような場合に、冷静さを取り戻すために、むこう6カ月~1年ぐらいの、月次資金繰り予定を、資金繰り表に書き出します。また月次資金繰り計画とともに、むこう3カ月ぐらいの、日次資金繰り予定も資金繰り表に書き出します。
人間の心理として、見えないものに対しては恐怖心が湧いてくるからです。資金繰りの状況が目に見えるだけでも、心が落ち着いてきます。
資金繰りをまわすためには、銀行の返済を止めるところからはじまり、それで足りなければ、税金や社会保険の支払いを止めることも行い、それでも足りなければ、経費類や買掛金まで手をつけていくことになります。
そのように、数か月先の資金繰りが見えてくるようになれば、経営者はだいぶ落ち着きを取り戻し、前向きな気持ちになっていきます。
会社を再生させるには、まずは何よりも、経営者が落ち着きを取り戻し、前向きな気持ちになれるかどうかが、第一歩となります。
事業再生のために必要な経営者の資質とは?
経営者の資質「精神力」「判断力」と「リーダーシップ」
「会社と社員を守り抜く」という強い精神力を経営者が持てるかどうかが、会社を再生できるかどうかの一番の要素であると考えております。
「精神力」「判断力」について・・・・
優秀な社長さんの場合
- 強い志を持ち、常にポジティブ(積極的)に物事を考えられる。
- 時間の大切さを知っているので、決断も非常に早い。
- 社員に対して信頼を置いている。
ダメな社長さんの場合
- 猜疑心が強く、社員を信用していない。
- 優柔不断であり、肝心の決めごとを社員任せにする。当然、決断を先送りにしがち。
- 苦言を呈する社員を遠ざけ、イエスマンしか近づけない。
「リーダーシップ」について・・・・
優秀な社長さんの場合
- 社員のさまざまな意見を聞き、その情報をもとに分析し、的を得た的確な判断を下せる。
- 社内の規律は厳しく、信賞必罰。
- モチベーションが高く常にミッション(使命)を持ち続けている。
- 会社の未来像が明確に示されていて、社員にやる気を持たせる社風がある
ダメな社長さんの場合
- 社長であることを鼻にかけ社員の痛みが分からない。また分かろうとしない。
- 社内の規則がなく、指示命令系統が徹底していない。
- 失敗を社員のせいにしたがるため、社員からの忠誠心も薄い。
- 社員にいらだった表情や怒声をあげる。
数十年前会社を失ってしまった経験からの言葉
実は私自身も数十年前までダメ社長さんの典型であり、数十年前会社を失いました。
その時のすべてを失った喪失感・孤独感は、死に体と同然であり、まだ必死で企業再生のために戦っていた時の方がどんなに精神的に充実感があったかを全国の社長さんに分かってもらい、私と同じ過ちを繰り返してもらいたくないのです。
好況期には頼れる精神力・リーダーシップをいかんなく発揮し、事業も順調に進んでいたはずなのに、時代も変わり厳しい経済環境の中で会社経営が悪化し始めると、守りの経営に慣れていないせいか、社長さんの10人のうち10人ともその精神力及び判断力が鈍ってくるものです。
本当に社長さんは攻めには強いのですが、守りに対しては非常に弱くなってしまいます。
また、社長さんを取り巻く環境は非常に厳しく、他人には言えない悩み・いらだち・孤独感にさいなまれ、「経営」という道から「焦燥感という非経営」の道に行ってしまうものです。
そうなると、お客様や社員及び金融機関に対して、見かけの冷静さを保っていくことが精一杯であり、そんな状態で相手に弱みを見せてしまえば、今まで築き上げた会社が、さらに窮地に追いやられてしまう悪循環に陥ってしまいます。
会社経営に窮した数多くの社長さんにお会いするたびに、私はこのことを感するのです。
しかし、「なんとしても会社を守り抜いて見せる」という強い意志をもった社長さんの会社は、必ず 再び蘇り復活していくことができます。
冷静に物事を判断し、「経営」という道の原点に立ち戻ってください。
たとえば起業した時のポジティブに富んだ、前向きな気持ちを思い出して下さい。